君のいない世界。

隣りに君がいた。
それだけでよかった。
僕の世界はただそれだけで満たされていた。
君と歩いた坂道、
君と見上げた空、
君と過ごした時間、
何もかもが特別だった。
僕の隣りから君が消えた。
あまりにもかんたんに、
君は消えた。

その日から、僕の世界は光を失った。
僕は君との記憶に耽った。
すべてを閉ざして、
記憶の海に沈んだ。
僕もいつかは消える運命なのだろう。
それが明日なのか、数年後なのかはわからないけれど。
それまで僕はこの色褪せた世界でどう生きればいいのだろうか。
もう君は此所にはいない。
消えれば君に会えるだろうか。
もし会えたら、また隣にいてくれるだろうか。
そんな想いに囚われながら、
それでも僕は生きなければならない。
それでも、君がいたぼくらの世界で―。